新緑が美しさを増す5月の陽気や過ごしやすさを思い浮かべながら次の文章を読んで頂ければ幸いです。
『五月』
「なんというすばらしい生育の力であろう。田に畑に、野に庭に、むくむくと萌え出る若芽の伸びて伸びて伸びてゆく勢いは、日に日に目を驚かすのである。
しかも、それに劣らないのは、子どもらの活力の伸長である。毎日その中に倶に居ながらも、日々に新しい目をみはらさせることばかりである。
伸ばそうとするばかりでなく、伸びるのを待っているばかりでなく、現に目の前に斯(こ)うまで伸びゆくのを驚く心。ーそれが五月の心であり、教育の心でもある。」
「育ての心(上)」より抜粋
倉橋 惣三(フレーベル新書)
ほめるでもなく、励ますのでもなく、注意するでもなく…
子どものそのままの姿、行動をただ受け取る。
【褒める】から【認める】へ。
保育や子育てをシフトしていく。
子どもの自ら育つ力を信じるとき、
子どもには自ら育つ力があるとするとき、
評価の意味を持つ「褒める」という行為が適切であるかを問われます。
「ほめる子育て」が、キャッチーさと、短期的な行動変容が見られるため、良い関わり方だとされた時期もありましたが、長期的にはマイナスな影響が出ることがわかってきていますね。
「大いに褒め」や「褒めることで」などを子どもの記録で頻繁に使っていた頃を思うと、胸が苦しくなります。
人を動かすため、成長のために褒める。しかし、大いに褒めなくても、その人が持っている育つ力が溢れてくる状態をつくっていきたいものです。
それは、うまくいったこともいかなかったことも、そのままのカタチで受け取ってもらえる「安心感」を重ねていくことでしか醸成されません。
「どんなあなたも大切なあなた」と、存在が認められる土壌の上に、育つ力はみなぎってくるのです。
倉橋惣三が「育ての心」を出したのは約80年前ですが、現代にこそ必要なあり方を教えてもらっています。
〈引用元〉
『育ての心』倉橋惣三|フレーベル館