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全員に効果がある万能な学習アプローチは存在しない

毎日の生活の中で、あなたが選択する行動には重要な意味があります。

1つ1つの行動が脳を変えているのです。

 

「容易に学べる人とそうでない人がいるのはなぜでしょうか?」

1人ひとりを尊重するあり方を考え、実践するときに必要な「学びの個別化」について脳の視点から見ていきます。(今回は、ララ・ボイド博士のTEDの内容を元にした記事となります)

 

「全員に効果がある万能な学習アプローチは存在しない。」

 この言葉にピンとくる方は、ぜひこの動画を観てほしい。

(日本語字幕あります)

「この講演で、あなたの脳は変わる」


After watching this, your brain will not be the same | Lara Boyd | TEDxVancouver

 

まずは、動画の内容を簡単にまとめていきます。 

 

脳に関する知見は驚異的な速度で変化しつつある。

同時に、過去に得られたはずの脳に関する知見の多くが間違いか不完全であることが判明している。

 

脳の発達や変化について、見聞きしてきたことは間違っていたことがわかってきているのだという。動画では次の例が挙げられていました。

 

【誤解①】

小児期を過ぎた脳は変化しようがない。

これは全くの検討違いだった。脳の変化は、年齢に制限されない。


【誤解②】

脳の中で常時使われているのは一部。何もしていない時の脳は休止状態である。

これも間違いで、常に使われているのは脳の一部だけではなく、何もしていない時でも活発だということがわかっている。

 

MRIの技術の進歩で、こうした重要な発見が可能となってきたようです。

 

そして、最も興味深く革新的な発見は、

 

「新しい事実やスキルを学ぶ毎に脳が変わる」ということ。

 

脳は常に進化する。脳は常に変化する。

 

これを神経可塑性[しんけいかそせい]と言います。

 

加齢や脳卒中などで脳の神経細胞が減少することから、ほんの25年前までは思春期以降の脳はネガティブな変化しか起こらないと考えられていました。

 

しかし、研究によって成人の脳にも著しい再構築が生じることがわかってきたことで、その後のさらなる研究によって、私たちの行動すべてが脳を変えることがわかったようです。

 

脳が学習する際の変化の仕方:基本的な3種類 

 

その3種類とは、以下の3つの変化です。

①化学的な変化
②構造的な変化
③機能的な変化

 

①化学的な変化

神経細胞の化学的なシグナルによる変化。これにより、短期記憶が可能となり、短期的なスキルの向上ができる。

 

②構造的な変化

学習の過程で、脳のあり方が変わっていく。物理的に脳が変わっていくので少し時間がかかるが、長期記憶や、長期的なスキルの向上に関係してくる変化である。

 

①は1日のレッスンでできるようになるような短期的な変化。

もし翌日に忘れているのであれば、②の構造的な変化が起きていないと言えるのだそう。

 

③機能的な変化

ある脳の領域を使っていくことで、その領域で興奮が起きやすくなり、どんどん使いやすくなっていく。脳はその領域を活発にするための条件を揃えるようになる。

 

この変化はそれぞれ単独でも起こりますが、ほとんどは呼応しあって全体で学習していかきます。


そして変化は絶えず生じます。

 

脳が成人になっても再構築をしていく原動力は、本人の行動です。

脳の変化を起こす主体は、その人の行動。

そして、肝心なのは、行動と練習(実践)の量です。

 

研究の前に立ちはだかったのは?

脳卒中からの回復を速める治療法に個人差が出るのは、データやアイディアの検証を困難にさせるため、医学的な介入研究はできるだけ個人差を最小化するべくデザインされるのだそうです。

 

しかし、研究の結果わかったのは、神経可塑性のパターンに個人差が大きいということでした。

 

脳卒中を起こした脳の研究から博士たちが得た教訓は2つ。

 

①脳の変化を起こす主体は、その人の行動。

②学ぶためのレシピはない。

 

①練習(実践)が何よりも大切で、自分がやるしかないのです。脳の変化を起こすのに、便利な特効薬はありません。付け焼き刃の学びではなく、学びが本当に自分のものになる構造的変化(長期記憶など)が起きるかは、その人の行動次第です。

 

②万能な学習アプローチは存在しません。1万時間練習すると熟達するといった通説もありますが、そんな単純な話ではなく、学習アプローチは固有なものだそうです。

 

これは、画一的な指導や一斉の教育のあり方を問い直す根拠の一つとなる研究結果です。

 

ララ・ボイド博士のメッセージのまとめ 

・自分にとって何をどう学ぶのかベストなのかを研究してみる
・脳にとって健康的な行動を繰り返す
 脳にとって不健康な行動や習慣はやめましょう
・学習とは、脳が必要とすることを実行すること

 

最良の戦略は1人ひとり異なります。

 

皆さん自身と柔軟な脳は周囲の世界と共に絶えず変化しています。

 

することのすべて、遭遇すること、体験することのすべてが脳を変えています。

 

脳は常に変化していますが、それは、自分の行動次第で、良い方にも悪い方にも変わるということです。


何をしてもしていなくても、構造的、機能的な変化に影響するのです。

どの方向に舵を切っていますか?

「学びの個別化」に舵を取るのか取らないのか。現場の選択が未来を大きく変えていくでしょう。

 

その保育者や教師のやり方に合わないと、子ども側に課題があるという見方がいかに適切でないか。

 

ただし、急激な変化は、大人側にも子ども側にも混乱をもたらすため、長期的にシフトしていく計画が必要である。

 

まずは舵を取る。

 

子どもの学びにとって、子どもの人生にとって、目の前に子どもたちにとって、本当にいい選択とは何か。そこに挑み続けることでしか創られない未来を見にいきたい。

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